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(R18) Moulin Rouge (HQ)

第12章 xxx 11.幽閉



 カラン、と音を立てるのは氷だった。
 片手に収まるサイズの彫刻グラスには、夕くんが届けてくれたお酒が注がれている。

「宅配だから大したのないけど」

 乾杯を促すように掲げられる赤葦さんのグラス。

 彼の飲み口より指一本分下げたところに、そっと、自分のそれを合わせる。カチンッ……小さな音を鳴らして硝子がぶつかった。

「口に合う?」

「美味しい、デス」

「そう。よかった」

 赤葦さんは静かな人だと思う。
 それはまるで深いところを流れる川のように緩やかで、穏やかで、気紛れだ。

 琥珀色の液体を受け入れる整った唇。男らしく浮き出た喉仏。お酒を飲む姿がこんなに絵になる人、他にいるだろうか。

 ぽやんとして見つめていると、私の熱視線に気付いたらしい。グラスに口を付けたまま、赤葦さんが困ったように笑った。

「………見すぎ」

 私のほっぺたを突つく彼の指。
 腕を伸ばしたことで捲れたシャツの袖口から、白くて細い布が覗いている。包帯、だよね。たぶん。

 どうして……怪我?
 そうは思ったけど、気付かない振りをして目を逸らす。

 彼の仕事はこの町のお金を動かす裏稼業だし、それに、あくまでお客さんだ。
 余計な詮索は無用。場合によっては失礼に当たってしまう。

 訝しげな顔になってしまわないように、ぎゅっ、と表情筋を引き締めた。

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