第1章 彼と初めて出会った日の事
Side:Rovino
あのガキンチョに始めてあったのは弟のフェリシアーノとダウンタウンに遊びに行ったときだった。
週末の唯一の楽しみがこの地下で酒と女を楽しむことだ。
いつも行きつけの店は下町の出入り口から近くて助かる。
このダウンタウンを歩いていて俺に道をゆずらねぇ奴はいない。
昼でも暗いこの場所はいつでも男をより野生的に女をより魅力的に引立たせる。
「にいちゃん。今日はあの子のこと僕に譲ってね」
「また次来た時に譲ってやるよ」
「え~、それ前も言ってたよ!」
こんな弟でも女性の前に立てば急に男になる。それはダウンタウンに限ったことではないがここでは良く映えるものだ。
初対面の印象が柔らかい上、このギャップに惹かれる女は多い。
…なんかずるいぞ、チクショー。
そんなことを考えながら歩を進めると、酒場の前で何か一悶着起きているようだ。
低い声の太った男と高い声のガキの口論が聞こえる。
太った男は泥酔しているようで子供相手に本気で殴りかかっている。
子どもはそれをこともなげにかわすとこちらに気付いたようだった。
「おい、トーニョのヤローに連絡する。あっちは任せたぞ」
「任せて!」
フェリシアーノが喧騒の中心に向かっていくとイヤカフでトーニョに連絡をした。
折角の週末だって言うのに、どうも面倒な雰囲気しかしない。
地下だから少し通じにくいが、何とか会話は出来そうだ。
「プロント?」
『オーラ、ロヴィ?どないしたん?』
「ダウンタウンでおっさんとガキが取っ組み合いだ。そっち連れて行くぞ」
『最近はなかったんやけどなぁ…。まぁええわ』
「じゃ、しばらくしたら連れて行く」
このダウンタウンで起きた問題は下町を支配するフェルナンデス家の傘下が制圧する。
ダウンタウンの中でも金持ちからは蓄えが増えすぎないようにこじつけで金銭を徴収したり、
問題を起こした輩には見せしめとして恐ろしいことを公衆の面前で行ったりする。
勢力が伸びきる前に俺たちがつぶしてしまう事を考えるとここは下町の植民地なのかもしれない。
『ガキのほうは生きたまま連れてこなあかんで』
「分かってるぞ、コノヤロー」
そういって通信を切って喧騒のほうに目を戻した。
泥酔男を相手している弟の横をこっそりと通り抜けようとしているガキが見えた。
道端の暗闇にまぎれてガキの行く手を塞いだ。