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【ヘタリア】蒸気と歯車の町【夢小説】

第1章 彼と初めて出会った日の事


「ごめんなさい、ちょっとはしゃぎ過ぎちゃったよ」

「質問に答えろ。何をしてるんだ」

「…あの少年とすこし話を…」

少年は猫を抱えて小さく震えていた。
確かに怒っているアーサーは怖いけどそんなに震えるほどじゃない。
今にも逃げ出しそうな彼をアーサーは呼び止めて俺の隣に立たせた。
隣に立った彼は顔を真っ青にしている。

「どうしてそんなに怯えるんだ。こいつが何かしたか?」

「俺は――!」

「アルフレッド、お前に聞いてるんじゃない」

アーサーは一言で俺を止めるとまた少年のほうに向き直る。
ひざを折って彼に目線を合わせるともう一度問いかけた。
彼は震えながら少しずつ言葉を言っていく。

「だって、貴族は殴るじゃないか。いつだってダウンタウンまで降りては威張り散らしていく…だろ?」

「たとえばどんな――」

アーサーが詳しく聞こうとしたとき、少年の頭に後ろから石が投げられた。
少年は痛みにわずかに屈むと次の瞬間には走り去っていた。
石の飛んできたほうを見ると暗がりの中に少年が数人居るのが分かる。
アーサーを見てすぐに逃げていくが、その服装は目立ちすぎた。

「ドラモンド家の兄弟たちか…。親に似て悪趣味な遊びだ」

「追いかけないの?」

「追いかけても仕方が無い。帰るぞ」

すぐに歩き出すアーサーのすぐ後ろを離れないように追って歩く。
階段の辺りに差し掛かって俺は我慢できなくなりふと聞いてみた。

「どうしてここの人たちは地上街で暮らさないの?ここじゃ朝も夜も分からないよ」

「地上街で暮らすには住民税がかかる。それを払えないからダウンタウンで暮らしてるんだよ」

「そうだったの!?」

「お前ももう13だろ。それくらいのことは知っててもいいんじゃないか?…おい!」

俺はさっきの少年にとても失礼なことを言ってしまったと思い、階段を駆け下りる。
すぐにアーサーに捕まってしまうが、それでも俺は一言謝りに行きたかった。

「いい加減にしろ!お前を連れてきたのは好き勝手走りまわせるためじゃないぞ!」

「でも、俺さっき彼に酷いこといっちゃったんだ!」

「それはお前が無知だったからだ。ほら、もう行くぞ」

「……いつか絶対に謝りに行くんだぞ」

俺はそうつぶやいてアーサーに連れられて階段を上る。
階段の先に広がる曇り空みたいにモヤモヤした感情が胸の中でぐるぐるとした。
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