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【ヘタリア】蒸気と歯車の町【夢小説】

第1章 彼と初めて出会った日の事


黒猫を追って付いた先は、どうやら酒場のようで酒場の中へと猫は入っていきました。
私もお坊ちゃんを後ろで付いてくるように言ってからそっと中へ入り、中の様子を伺います。
鼻につく煙草の煙と派手な店内の装飾には似合わない程、店内は重い空気でした。
店内を見回す私を見つけて、白いマスクを目元につけた店主らしき人物が話しかけてきました。

「悪いなお客さんよ。今日はたいしてうまい酒は飲めねぇぜ?」

「いえ、構いませんよ。こちらは人を探しに来ただけですので」

「仕事の依頼か?悪いな、専門のやつは出払っちまっててな」

「その方はその黒猫の飼い主ですか?」

「あぁ、そうだ」

お坊ちゃんに帰ることを告げようとしたとき、背後から新たなお客が入ってきました。
私はその顔を確認するや、急いでお坊ちゃんの手を引きその男から距離を取りお坊ちゃんを物陰へと隠しました。
入ってきた男とは貴族街からもダウンタウンからも要注意人物と名高い下町ギャングのボス。
アントーニョ・ヘルナンデス・カリエドだったのです。
六年前の惨劇以降、彼の存在は地下街ではタブーとされ、忌み嫌われる象徴と化しています。
店内の緊張感は一気に高まり、腕っぷしの太い男たちは皆各々の武器を手に臨戦態勢を取り警戒し始めます。
私ももちろんその一人で、腰元の獲物へ手をかけていました。

「そんな歓迎されたらかなわんわぁ」

「こんな所へボス様直々においで下さるとは恐れ入るな」

「大したことやない。迷子の野良犬を返しに来ただけや」

そういって手元のカバンを足元へ置いて軽く足で押してこちらへと滑らせました。
酒場の主人と思われる仮面の男がそのかばんをそっと開くとその中にはぐったりとした少年が入っていました。
先ほどの黒猫がカバンへと飛びつき、少年の様子を窺うように喉を鳴らしました。
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