第1章 彼と初めて出会った日の事
何を話すわけでもない空間で俺は一生懸命に考えていた。
決まりは決まり。従うべきやと思う。けど、こんなんやっぱり俺には無理やって。
六年前も決まりに従ったは良いけどそのあとの処理とか全然ダメやったやん。
親父には悪いけど、ほんまにあかんねん。
腐れ坊ちゃんと喧嘩しよる位が丁度良かったんや。
真っ暗な地下室の扉を開けて名前を中に入れた。
「見えるか?部屋の奥に置物があるんやけど」
「…暗くてよく見えない」
「もっと目を凝らしてみ…」
そっと銃を握りしめてリョウの背後に近よる。
リョウは前かがみになりながら何もない部屋の奥を観察している。
動かんとってな…!
「おい、何にもな…ッ!!」
リョウの後頭部目がけて銃のグリップを振り下ろした。
鈍い音と共に崩れ落ちる小さい体を受け止めて抱きかかえた。
あの店にはロヴィたちが居るやろうし、どないしたもんかな。
同じく地下の倉庫へととりあえず運ぶと、子供一人入るくらいのカバンがないか探した。
幸い、年よりは体が小さいおかげでギリギリ入りそうな大きさのものを見つけて膝を抱かせるような体勢で何とかカバンを閉めた。
倉庫の外の様子を見ると、階段からロヴィが下りてきたのが見えた。
心臓が高鳴るのを深呼吸で押さえながら倉庫から出る。
「どないしたん?女の子と遊ばんの?」
「あんなことがあって女の子が寄ってくるわけないだろ」
「まぁ、それもそうか…」
「地下室、掃除しといてやってもいいぞ。…コノヤロー」
「…何べんも言うけどな、お前は家の人間やないねん。制圧してくれたんも嬉しいけど…」
「ガキ扱いすんな。俺はもう強いんだぜ?」
「ロヴィ。お前はフェリちゃん守らなあかんのやろ?ならこんなところに居ったらあかん事くらいわかるやろ?」
「また説教かよ…」
「ロヴィ?まだ話は終わっとらんで!」
ロヴィは速足で階段を昇っていくが、少しして足音がとまり、地下室の掃除は俺がするからな!と言って地上階へ向かったようだ。
地下室の血の跡など掃除して消えるものではないが、そこら辺は適当に任せることにした。
俺は今から遠出するような大きなカバンを持って地下街へと急いだ。