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【ヘタリア】蒸気と歯車の町【夢小説】

第1章 彼と初めて出会った日の事


Side:Antonio

あの子が部屋に入ってきたときは野良犬でも迷い込んだんかと思うほど汚かった。
ダウンタウンの子どもは確かにみすぼらしい格好の子が多いけどこれはあからさまに酷い。
俺は椅子を二つ用意して向き合うように置いた。

「ほら、座り」

俺を警戒しながらそっと椅子に座る。よく見ると小さく肩が震えているのが見える。
それでも鋭い目で俺を見つめて、隙さえ見つけられればすぐに逃げ出しそうやった。
けど、ここで逃げ出してもダウンタウンには戻れない。
それが俺の親父が作ったこの下町と地下街との変らない決まりだ。

「はじめまして。俺がこのフェルナンデスファミリーの四代目ボス。アントーニョや」

「俺は…リョウ」

「よろしくな、リョウ」

初めはちょっとしたことをなるべく穏やかな声でゆっくりと話した。
最近あった楽しかったことや、腹が立ったこと。
その合間に少しずつ今日のことを探って行った。
リョウはすぐに緊張もなくなったようで素直に質問に答えて行った。
情報を聞きだした後は…地下室か。ほんま、許したってな。

「さっきあった事について聞きたいんやけど」

「あの酔っ払いおじさんのこと?」

「そう。なんで喧嘩になったん?」

「すれ違いざまに殴りかかってきたんだよ。あいつアヘン麻酔で頭イカれてたからさ」

「そうなん?アヘンなんてだれに貰うんや」

「そこまでは知らないよ」

これだけ聞ければ十分だ。ロヴィに無言でイヤカフを飛ばして合図する。
これは尋問が終わった時の暗号だ。ファミリーの誰かを呼んできてくれというサイン。
頭を撫でてそっと微笑んで見せた。地下室に行けばそれ以上誰に会うことも無くこの子の生涯は終わる。
せめて最後に優しくしてあげることは罪やろうか。

「四代目のボスって言ったっけ?」

「せやで。どうかしたん?」

「じゃあ三代目はアントーニョのパパだったのか?」

「そうなるな。リョウのパパはどんな人なん?」

「すっげぇ優しいパパだよ。力持ちでカッコいいんだ」

「そうか、お前のパパにも会ってみたいなぁ」

そんな話を他愛のないものだと気を抜いて話していた。
それがまさかこの子供の最期の反撃とも知らずに。
その反撃の今後が大きく関わるとも知らずに。
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