第1章 第一章
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「おい…起きているか?」
「山姥切。言ってなかったけ? 俺は正座したまま寝れないんだよ」
「…そうだな」
草木も眠るような深夜。主の使う燭台の柔らかな光で目を覚ました山姥切は、ずっと心残りだったことを聴いてみた。
「…俺は今日初めてアンタのあんな顔を見たよ」
「へぇ、どんな顔してたか? おもしろかったか?それとも…」
「話を誤魔化さないでくれ。なぁ、アンタどうしてあんなに怒ってたんだ。それに、どうしてあいつらを許したんだ?」
山姥切の問いに、主は振り向かず応えた。
「そうだなぁ…俺はこの本丸の奴ら全員に傷付いてもらいたくないんだよ。それをわざわざ自分達でやるなんて論外だ。…でもまぁ、あそこまで反省して縮こまってたら許すしかないだろ」
「アンタ、そんな事を考えてたんだな…」
「やかましいわぃ!」
主の拳骨が脳天に直撃した。