第15章 サヨナラしますか
ひとり。ぼんやりと空を見る。
瞬くのは大きなオリオン座。
かおりとの待ち合わせまで、あと、どのくらいだろうか。時計を見ることも忘れて、長いようで短かったバレー人生に想いを馳せた。
そりゃ、プロに憧れたこともある。
だけど、俺の道はそれではないと思うから。だからこそなのかもしれない。俺は、木兎に、自分の夢を被せてる。
きっとそう。
でも、純粋に、友人として応援したいのも本音なのだ。顔を合わせればいつだって「俺はプロになるぞ-!」だなんて、キラキラの笑顔で言うもんだから。
気付けば応援してた。
口には出さないし、コートを挟んだこっち側からしか応援できないけど、でも。ずっと側で見てた。
だから、知ってた。
とっくに気付いてた。
木兎がかおりに惚れてること。かおりが木兎に惚れてること。彼らが、兄妹で好き合ってるということ。
恋愛に現を抜かしているせいで、木兎のプレーが安定しなかったことも。気付いてた。
『私、……お兄ちゃんの後輩に目障りだって言われちゃって』
あの日、都会の雑踏のなか。
彼女を見つけたとき。彼女から木兎や赤葦との話を聞かされたとき。俺は、これはまたとないチャンスだと思ったんだ。