第15章 サヨナラしますか
敵なのに、どうして。
最初は自分でも分からなかった。
俺には俺のチームがあるし、導くべき後輩もたくさんいる。音駒高校の主将として実現したい夢だってある。なのに。
どうして、こんなにもアイツを、木兎を応援してやりたくなるのか。
答えは簡単だった。
『お前の兄貴はすげえよ。そんなすげえ兄貴に、一体、どれだけの選手が憧れてるか……お前は知ってんのか?』
これは俺の台詞。
いつしかの台詞。
どれだけの選手、じゃない。
俺だ。他でもなく。
木兎光太郎というバレー選手に魅せられて、憧れて、追いかけた。俺自身のおはなし。
思うのだ。
木兎に負けたくない。勝ちたい。悔しい。そう思う反面。すげえ。かっこいい。俺もあんな風になりたい。
心から、そう思う。
スパイカーになりたいワケじゃない。エースになりたいワケでもない。ただ、彼のように。
会場ごと自分に惹きつけてしまうようなプレーヤーに。そんな選手になりたいと思った。
誰にも話してない。
俺だけの、ひみつ。