第14章 傷ついたふくろう
彼に迷いはない。そう見える。
以前の兄はもうそこにはいないけれど、冷静な分、プレーの精度は格段に上がってる。雑念を振り払った彼には、強さだけが残ったのだ。
恋愛が、自分が、雑念だったと思うとすごく悲しいけど。
でも、私たち高校生にとって【恋】はそれほどまでに重要で。これまでの生活を180度変えることができるくらい、大きなモノで。
夢と両立するには、重たすぎるから。
だから、これでいいんだ。
今日改めて兄を観て実感した。
彼は、彼の道を。
私は、私の道を。
私たちは、それぞれ歩んでいく。
「バイバイ、なんだね……本当に」
枯れるほど泣いたはずなのに。
目頭が、熱い。
こぼれそうになる涙を必死に堪えて、体育館を出ようとする。
ピ──ッ
タイムアウトを知らせる笛。その甲高い音につられて、もう一度。コートに目を向けてしまったのが間違いだった。