第13章 穏やかじゃない
悲しい。寂しい。
胸を満たすのは不安だ。言いようのない不安が霧のように広がっていく。いやだ。苦しい。息が、できない。
このモヤモヤした気持ちの正体に、俺は、とっくに気付いていたんだと思う。
ただ、避けてただけで。
そう、気付いてたんだ。
それが今ここにきて露呈した。
木兎が変わったことによって、まざまざと、突きつけられたのだ。
木兎はいつかきっとプロになる。
眩しくて、遠くて、俺なんかには想像もつかない。世界の舞台で戦っていくのだろう。この先も、ずっと。
そのとき、俺はこいつの隣にはいない。
いられないのだ。
豪快に点をもぎとって雄叫びをあげる彼を、木兎を、俺は観客席から観てる。コートの外から観ていることしか、できない。
それが悔しい。
悔しくて、悲しい。
──寂しいよ。
「……どした? 顔、すげえ怖いぞ」
いつものコンビニ前。
フライドチキンをかじる友人に瞳を覗きこまれて、その黄金に心臓が跳ねた。
やばい、俺、つい顔に出て。