第13章 穏やかじゃない
不慮の事故による負傷。
腕の怪我が治るまでの間、監督に命じられた休養。
それに文句も言わず、かといって部活も休まず、木兎は黙々と足腰のトレーニングに徹していた。
地味な筋トレ、嫌いなくせに。
彼は一言たりとも不満を口にしなかった。それどころか、一歩引いたところからチームを観察し、アドバイスまでしてくれるのだ。
(主将かよ。いや、主将だけど)
明日は槍でも降るのだろうか。
元々主将としての才覚はある、と思う。木兎にはそれだけの資質があるし、素直に「コイツについていきたい」と思わせてくれる男だ。
だけど、なんていうか。
ちょっと頼りないところも含めて、木兎だった。それが俺たちの主将だった。そんな彼を支えるのが俺たちの、ある種【存在意義】でもあった。
要するに寂しいのだ。
急に変わってしまった木兎。
彼が、突然、すごく遠い存在に思えて。もう二度と、以前のアイツには会えないような気がして。
「木葉ー! 一緒に帰ろーぜー!」
人懐こい笑顔。裏表なく。
太陽のように笑う。
コートから出れば何てことはない。普段通りの木兎だ。これまでと何も変わらない。天真爛漫で、明るい、友人がそこにいる。