第13章 穏やかじゃない
一大事だった。
梟谷排球部創設以来の、それはちょっと言いすぎか、ともかく一大事である。
「週末の練習試合は二年中心でいくからな。三年は本戦に向けて各自、トレーニングと調整を怠らないように。ああ、それから、体調管理な。試合前に風邪だけは引くなよ」
おかしいのだ。
木兎の様子が。
いや、たしかにアイツは主将だし、こうして部を取りまとめるのが仕事なのだけれど。
「なあ木葉……あれ、誰?」
チームメイトの小見が青ざめた顔で問う。その隣にいる猿杙も、同じ疑問を抱いているらしい。
恐らく、ここにいる全員が同じことを考えているのだろう。マネージャーも、コーチも、監督もだ。
あの木兎が、ちゃんとした主将に見える。やはり一大事でしかない。
「まるで別人、だな」
重々しく言ったのは鷲尾だった。
激しく同感だ。
今までの木兎といえば、部活終了後の総括をする赤葦の隣で、腕組んでうんうん頷いてるだけだった。
影響力だけは人一倍のくせに、言語力がとても残念で、思わず支えてやりたくなる俺たちの主将。
それが、今や、あれである。