第2章 お兄ちゃんと私
古びた近所の体育館だった。
小学生のクラブチームの、ちっぽけな大会だった。
でも、それでも、その場にいた人すべての視線が。意識が。
「──ボールでさえも」
兄に惹きつけられたのだ。
「すごかった。本当に。
すっごくドキドキしたの」
「かっこよかった?」
「うん。かっこよかった」
ずっとそばで観ていた。
兄がバレーで頭角を現して、スター選手になっていくのを。
ちょっと寂しい気もしたけど、一番近くで応援できるのが本当に嬉しくて、それだけで。
それだけでいいと思ってた。
だけど、それは違うんだって、ある日突然思い知らされる。
兄を追いかけるようにして入学した梟谷学園。そこで見た光景に、私は心底驚かされたのだ。
「まさか光太郎がモテるなんてね」
「おい……まさかは余計だろ」
「ふふ、ごめん。それでね──」
私はやっと気付いたのだ。
兄を自分だけの物にしたい。こころの奥底で渦を巻く、そんな、みにくい独占欲に。