第12章 いつか王子さまが
「赤葦くんにはね、ポスターの撮影に協力してもらってるんだ」
おっとりとした口調だった。
例えるなら、そう、くまさん。
プから始まる蜂蜜好きのキャラクターを彷彿とさせる彼こそ、梟谷学園演劇部をまとめる部長である。らしい。
尊敬の念をこめて部長さんと呼ぼう。
彼の名誉のために言っておくが、くまのPさんをもじったとか、そういうワケではない。赤いTシャツを着せたいだとか、そんなことは全然思ってない、全然。
閑話休題。
彼曰く、梟谷演劇部は慢性的な人員不足。唯一の女子部員は昨年卒業してしまったし、残るは、男子部員が六名だけ。
迫る冬季公演の演目は【シンデレラ】と、部の伝統でそう決まっているらしいのだが──
「見ての通り、僕らは、王子さまには程遠い見た目でね……せめてポスターだけでも、ってことで赤葦くんにモデルをお願いしたんだ」
部長さんは三年生だ。
聞けば、クラスは兄と同じ一組なんだとか。兄の紹介だと思うと心中複雑だが、まあ、たしかに。
衣装を身にまとった赤葦は、……王子さまである。どこからどう見ても王子さまだ。非常に釈然としないけれども。