第12章 いつか王子さまが
「ほ、ぎゃー!」
「……うるさい、声、でかい」
「な、ななな、なんで」
もはや悪夢だった。
扉をあけた先に奴がいたのだ。
人のことを散々脅しておいて、挙句、目障り呼ばわりした赤葦京治が。
「どうして赤葦がここに……!?」
当然といえば当然の疑問だ。
赤葦は演劇部の部室にいるべき人間ではない。彼はれっきとしたバレー部員で、副主将で、兄の相棒という輝かしいポジションを得ているのだから。
「はっ……! 運動部の部室棟拡充のためにここを乗っ取るつもりで、脅しをかけにきたとか……きっとそうだ赤葦ならやりかねない……!」
「それ、心の声のつもり? 嫌味なモノローグがだだ漏れてるんだけど……乗っ取りでも脅しでもないし」
じゃあ、なぜ。
そう問いたげに首をひねる。すると、その質問に答えをくれたのは大柄な男子生徒だった。