第10章 馬鹿じゃないの
怒った赤葦は超怖え。
これは梟谷排球部では周知の事実で、赤葦京治を怒らせた奴はもれなく地獄を見るんだけど。
「ブッ殺す……!!!」
しょっちゅう赤葦に叱られてる俺ですら、こんなに怒ってる姿を見るのは初めてだった。
鬼の形相で保健室を飛び出していこうとする赤葦を、必死になって保健の先生が引き止める。
「バカな真似はやめなさい! 赤葦君まで怪我したら……っ」
「俺なんかどうなってもいい!!」
ああ、そうだ。いつもそう。
赤葦はいつだってそうだよな。
俺がツラいとき。俺が苦しいとき。自分は平気ですって顔して、本当は一番、心を乱してる。
お前はすげえ頭が良いから、自分がそんな素振り見せたらダメだって分かってて。だから、いつも強がってる。
一応分かってるつもりだよ。
だって俺、センパイだから。
でも、ごめん。
やっぱり何も分かってやれてなかったみたいだ。
「この人がいないコートなんて興味ない!意味がない! だから、木兎さんからバレーを奪う奴がいたら、誰だろうと俺が許さない!!」
「分かったから一旦落ちつきなさい! あなた、……呼吸が!赤葦君!」