第10章 馬鹿じゃないの
赤葦が倒れるよりもほんの少しだけ早く、俺はベッドから飛び降りた。
俺とそんなに背は変わらない。
でも、やたら軽く感じる身体。
苦しそうに息を繰りかえす赤葦の顔は、まるで、血が通ってないみたいに青かった。
「木兎君……! あなた、腕は」
「俺はダイジョブ。先生、紙袋」
「え、ええ……はい、これ使って」
ごめんな、赤葦。
お前がどんな思いでバレーやってるのか、ちゃんと分かってやれてなかった。
かおりのことだって、きっと、赤葦なりに色々考えた上での行動だったんだろう。
「赤葦」
「……っぼく、とさ……ん」
「俺、絶対また飛ぶから」
妹への想いを忘れる努力をするから。
「お前が上げるボール、全部俺に寄越せ。俺が打ってやる。ひとつ残らずだ」
「ぜんぶは、ムリ……でしょ」
「ばか。たまには乗ってこい」
「……バカは、どっちですか」
馬鹿じゃないの___fin.