第9章 付き合ってみる
何かがおかしい。
いや、というか、黒尾先輩がだ。
この人がおかしい。
「な、なんでそう、いきなりそういう話になるんです!」
がっしりと掴まれた手首を自身のほうに引きつつ、必死の抵抗を試みる。
しかし、相手はバレー選手。
ボールを易々と片手で掴んでしまうのだ。私がいくら抵抗したところで、彼はビクともしない。
「お前が俺と付き合えば、全部丸く収まるだろうがよ」
「全然まるくない! むしろ、ぐじゃぐじゃのカオスです!」
「うっせえな……いいから、俺の言うとおりにしとけって」
だめだ。会話にならない。
どんどん先輩のほうに引き戻されてるし、このままでは私の貞操すら危うい状況である。
「すっ……好きでもない人と、私は付き合えませんってば!」
「じゃあ、兄貴と正々堂々手繋いで表歩けんのかよ」
「……! そ、れは、」
言い淀んでしまったのがいけなかった。黒尾先輩はその隙をついて、私をソファに押さえつける。