• テキストサイズ

(HQ) プラトニック・ラブ

第8章 悪いことしましょ



 ドンッ
 なにか固いものに当たる衝撃。

 右肩が後方に弾かれて、持っていたバッグが逆さまに落ちていく。

 スマホ、財布、ポーチ。
 次々と中身が溢れて、コンクリート製の通りにそれらが散らばった。

 誰かにぶつかったんだろうけど、謝ろうと振り向いたときには、もうそこには誰もいなくて。


「……あーあ」


 道行く人からチクチクとした視線。

 うわ、かわいそう。
 そんな声すら聞こえてきて、悔しいやら、恥ずかしいやら。余計に涙が溢れてくる。

 レギンスが伝染するとか。
 服が汚れちゃうかもとか。

 そんなの、もうどうでもいい。

 崩れ落ちるようにして膝をつく。真下を向いて、バッグの中身を拾い集める。せめて、惨めに崩れたマスカラが、誰にもバレませんように。

 お気に入りのケースに傷が付いてしまったスマホ。それを取ろうと手を伸ばした、そのときだった。


「大丈夫?」


 私より、ほんの少しだけ早く、スマホを拾った大きくて筋張った手。

 顔をあげると、そこには見覚えのある男が立っていた。

/ 96ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp