第2章 お兄ちゃんと私
「光太郎、顔、疲れてる」
兄の頬を手のひらで包みこむ。
「居残って練習してたからな」
私のそれより何倍も大きな彼の手が、外側からふわりと重なった。
あたたかくて優しい温もり。
とくん、とくん。
鼓動がゆるやかにテンポをあげる。心地いい。お兄ちゃんの体温、鼓動、息遣い。全部がゆっくり伝わってくる。
「練習試合だったんだっけ……観に行けなくて、ごめんね」
「いや、いい。試合には勝ったけど、今日は全然ダメだったから」
「それでも、観たかった」
コートを駆ける兄が好きだ。
豪快に点をもぎ獲る姿も、敵に投げかける好戦的な視線も、ちょっと面倒な彼の癖だって。
「まだしょぼくれ中?」
茶化すように聞いた私に、兄はむすっと唇をとがらせる。
「……かおりが慰めてくれたら治る」
なんてかっこよくて。
なんて、可愛らしい。
私の、──大好きなひと。