第2章 大切なきみ
「 やっぱ虎かな?
虎と旅してみたいもん。
そんな映画あったよね 」
「 この心理テスト
あなたには当てはまんないわ 」
「 なんで?」
「 あなたの考え方が普通じゃないの 」
嬉しくなるようなこと言いやがって。
照れ隠しで彼女の傘を
自分の傘でつんと突いた。
そしたらグラついて
うまく歩けないみたいで
怒ったように口を尖らせる。
「 ちょっと何するの!
水たまり歩いちゃったじゃん!」
「 (嬉しくさせる) あなたが悪い 」
「 理由になってない!」
なんて言いながら
がやり返しのように
傘を勢いよく突いてくるおかげで
私も水たまりにぼしゃん。
「 やりやがったな 」
「 わあ怖い!」
子どものように逃げる。
その後ろを追っかけて
そっと彼女の腕を引っ張った。
「 濡らした罰 」
そのまま自分の傘を閉じて
彼女の傘の中に入った。
意地でも相合傘してやるんだから。
「 ふふっ 相合傘だね 」
素直になって笑う。
仕事も食べ物も子どももプライドも
君には負けてしまう気がする。
優しく笑う君が
この時間が空間が
泣きたくなるくらい
一番大事なもの。
その言葉も口にできない。
その代わりにキスをする。
なんでキスより言葉が難しいんだろう。
「 いきなり...!」
「 したくなったら
いつでもどこでもキスしますよ 」
言葉はいつだって伝えられそうでも
実際はそうじゃない。
その時の思いが無くなってしまえば
その時の記憶が無くなってしまえば
同じ言葉を伝えても
それは同じ意味を示さない。
その時しか伝えられないのに。
後で後悔したって遅いのに。
私はきみに伝えられなかった。