第9章 儚い虹
「 なわけねえか... 」
ボソッと呟いて先生の前に座った。
ふたりに限って離婚なんてことはない。
それだけは確信が持てた。
「 で、話って?」
机を挟んで静かに座る先生。
カバンの中を探り始めて
机の上に一枚のハガキを出した。
顔を近づけて見る前に
先生の声がその内容を告げた。
「 の... 」
一度口を開いた櫻井先生は
またその重たい口を閉じた。
訳が分からず俺はただ先生の顔を見た。
「 の... 葬式の案内です 」
開きっぱなしの窓から
部屋の中に冷たい風が入る。
この沈黙もこの時間も何もかも
消し去ってくれればよかったのに。
「 は...?」
今、何て言った...?
声にもならない息が出た。
視線は先生の顔にあるっていうのに
焦点なんて全く合っていなかった。
「 が... 死にました... 」
喉に何かが詰まったみたいに
口から言葉が出てこなくて。
代わりに手が震え始める。
信じられずにハガキを手に取った。
「葬式」「櫻井」
この2言だけが辛辣に目に入る。
体に震えが走り
ハガキには透明のシミが
一つだけついていた。
「 が... は...!」
感情を押し殺したかのような
櫻井先生の言葉を
首を横に振って遮った。
聞きたくない聞きたくない...
一心にそう思った。
「 なんで... 」
やっと出た言葉は
突然の衝撃に対する疑問だった。
が事故に遭った時と同じだ。
相葉さんから聞いた時も同じように
「 なんでっ... なんで... 」と嘆いた。
そうやって問いかけるのは
その事実を認めたくないからだ。
認めてしまったら何もかも
終わりのような気がするから。