第5章 初めて会ったきみ
雪がチラつく聖なる夜に
私はサンタ姿で店の前の出て
クリスマスケーキを売る。
「 幸せそうなことで... 」
今日で何組のカップルを見たことか。
羨ましくないと言えば嘘になる。
彼女に出会ってから
クリぼっちがやけに苦しくなった。
願望ばっかり増えてっちゃって。
願い事叶ってくれるんだろうか。
「 おーい ニノ!ぼーっとしない!」
そう言って隣で
ケーキを売るのは潤くん。
男二人でサンタ姿でケーキを売る。
なんと寂しいクリスマスだ。
「 はいはい。
メリ〜クリスマ〜ス!
クリスマスに素敵なケーキは
いかがですか〜!」
ベルをカランカランと鳴らしながら
お客さんを呼ぶ。
早くノルマ達成しないとね。
「 あ、さん 」
少し離れた場所に彼女が見えた。
見た瞬間に胸が引き締まる。
彼女が好きだから。
同時に嫌な予感がしたから。
彼女の手にはスーツケース。
「 なんでスーツケース?」
潤くんも疑問に思ってるようで
顎を触りながら何かを考えていた。
何かを閃いたかのように
突然声を上げる。
「 そう言えば
引っ越すって言ってたかも。
スーツケースだって持ってるし 」
閃いたわけじゃなくて
思い出しただけだった。
でもその内容があまりにも予想外で。
「 え? 」
そんなの知らなかった...
突然すぎない?
ケーキだって予約してたのに。
ここ最近毎日のように
電車で一緒に帰ったのに。
お店でたくさん話したのに。
なんで内緒で出て行くの。
「 想い伝えとかなくていいの?」
「 え?」
「 好きなのバレバレなんだけど 」
潤くんから出た言葉に顔を上げた。
にやにやした顔がこちらを見つめる。
幼馴染みには敵わん。
そこからはあっという間だった。
「 ... ごめん潤くん!すぐ戻るから!」
「 とか言って戻んないんだろ 」
去り際に潤くんがそう言う。
そうかもしれない。
戻りたくない。