第5章 初めて会ったきみ
「 それにしても寒いですね... 」
手に白い息を吹きかけながら
彼女は話を変えようとする。
寒さとは反対に顔はまだ赤い。
「 あなたの格好は寒いでしょうね 」
マフラーも手袋もしてなくて
羽織ってるのはコート1枚。
冬の夜にしては寒すぎる。
「 まだこれでいけるかなって
思ったんですけどね 」
「 いけないから、はいマフラー 」
自分の首からマフラーを取って
彼女の首に巻きつけた。
「 だっ、大丈夫ですから!」
「 男にカッコいいことさせてよね 」
彼女は言い返す言葉がないみたいに
素直にマフラーに顔を埋めた。
「 何か二宮さんってずるい 」
なんて嘆きながら。
寒いけど、寒いの嫌いだけど
このままでいたいと思った。
「 ぼく、サンタさんへの願い事
大っきいクマのお人形さんにする!」
隣の列でお父さんに抱っこされてる
小さな子供が嬉しそうにそう言った。
ゲームだとか金だとか
ませてる子供が多い中で
クマの人形なんて可愛らしい。
「 サンタさんへの願い事なんて
小学校くらいで終わってたな 」
ボソッと昔を思い出す。
俺にも可愛らしい時代があったもんだ。
「 そんな夢のないことを... 」
「 さーせん。あなたまだ信じてるの?」
そんなこと聞くと
笑いながら睨まれた。
そんな子供じゃないですって
目で訴えてきてる。
「 サンタさんは信じてませんけど
お願い事はしますよ。
だって聖なる日ですもん。
願い事は叶うと思います 」
彼女がそう言うと
本当にそんな気がしてきた。
クリスマスが素敵な日に思えた。
「 今年のお願いは?」
「 願い事は教えちゃいけないんです。
二宮さんもしてみたらどうですか?」
「 願い事ねえ... 」
願い事... 願い事...
わがままを言っていいのなら
もう少し、あと少し。
彼女との距離がどうにかならないかな。
今年のお願いはこれにしよう。
「 決まった 」
「 早っ... 」
毎年願ってないのに
都合のいい時だけ願うって
バチ当たるかな?