第5章 初めて会ったきみ
冬の駅は嫌いだ。
寒いし寒いし寒いし。
ただ星だけは綺麗だけど。
上着のポッケに手を突っ込んで
電車待ちの列に並んだ。
「 さっむいっ... 」
ふと並んだ列の前を見ると
カップル専用車両なんじゃねえか
ってぐらいのカップルの多さ。
はいはい。
どうせ私は独り身ですよ。
なんて心の中で呟いてみる。
目のやり場に困って
ちょっと後ろを向いてみた。
「 あ、」
私の上げた声に
真っ赤な手に息を
吹きかけてた彼女が
顔を上げた。
「 ...? あ!ケーキ屋さんの!」
ケーキ見つめてたみたいな笑顔で。
いちいちその笑顔にドキッとする。
「 どうも 」
「 こ、こんばんは。にのさん 」
「 にのさん 」に笑ってしまった。
そう言えば自己紹介してないや。
自分は予約用紙の名前見たけど。
私の苗字『にの』だと思ってるし。
「 んふふっ 二宮だかんね。
さん 」
「 えっ あ!ごめんなさい... 」
「 まあ全然いいけど 」
名前覚えてもらってただけで
(ちょっと違ったけど)
こんなに嬉しいなんて思わなかった。
「 でもこんな所で
会うなんて奇遇ですね 」
「 帰り道 」
「 わたしもです 」
ちょっと帰り道が同じなんて
ありがち過ぎるだろ。
奇跡という言葉が頭に浮かんだ。
何ロマンチックなこと言ってんだか。
これも全部クリスマスシーズンのせい。
「 今までも同じ電車に
乗ったことあったんですかね?」
見覚えないなあ、なんて言いながら
彼女は首をかしげる。
「 それはないと思う。
最近ここ使い始めたから。
それに絶対忘れない顔だし 」
「 絶対忘れない顔って... 」
眉間にしわを寄せながら
彼女は自分の顔を触っていく。
眉間のしわが...
「 褒めてるんだけど 」
「 そうは聞こえません 」
一回見ただけで
こんなにも覚えてたんだから
本当に褒めたんだけど。
「 可愛いから 」
ボソッと言ったこの言葉が
聞こえたかは分かんないけど。
顔を赤くしてるから
やっぱ聞こえてたみたい。