第5章 初めて会ったきみ
「 あ、!おはよ 」
新しいケーキを持って
奥から出てきた潤くん。
タイミング悪いなこいつ。
「 おはようございます 」
「 今日のお勧めは
苺のムースタルトだよ 」
ケーキを並べながら
彼女にそう言う潤くん。
本当にいつも聞いてたんだ。
まあ、パティシエの潤くんの
お勧めが正解だよな。
「 今日はルージュブラン
買うことにしました 」
彼女はチラッとこっちを見て
お礼のように微笑む。
あら、潤くんのお勧めじゃないの。
「 マジ?自分で決めたの?珍しい 」
「 自分で決めたわけじゃなくて。
こちらの新しい店員さんが
ルージュブランがお勧めって 」
自分の方を選んでくれたのが
何だか(少しだけ)嬉しくて
にやける口元を手で隠した。
「 なんだニノかよ 」
「 なんだって何だよ 」
彼女は潤くんと私の顔を
交互に見ながら口元を隠して笑う。
「 そうだ。
クリスマスケーキはどうする?
クリスマス限定ケーキなら
早めに予約しとかないと 」
「 じゃあ予約しときます 」
「 はいよ〜 ニノちょっと
予約書く紙渡してあげて 」
人使い荒いな松本。
まあ、店員なんで仕方ないですが。
ほい、と紙とボールペンを渡す。
綺麗な字で『 』
と書かれた紙が帰ってきた。
「 はい、じゃあ控えの紙と
お勧めのルージュブランね。
ありがとうございました 」
「 こちらこそ
ありがとうございました 」
彼女は笑顔で一礼して
お店を後にした。
出て行ったドアを
じっと見つめてしまう。
「 何、一目惚れした?」
なんてからかってくる潤くん。
出た松本うっさいタイム。
「 ち が い ま す!」
一語一語はっきり言った。
気になったとは言えなくて。