• テキストサイズ

閑話休題?ーNARUTOー

第17章 美瑠ー鬼鮫ー


立ち去りかけて、フと美瑠が振り返る。

まただ。
白い衣。風が吹いて来る。

「さっきのお訊ねですが」

美瑠の笑顔。

「はあ」

ぎこちなくならぬよう、滑稽な程自制している自分。

「人はその心ばせが立ち居振舞いに顕れるものです。私は両親にそう教えられてきましたし、私自身の僅かな経験でもってもそれは間違いではないと思います。その伝で言うと、あなたはきっと、真面目な方です」

美瑠はここで少し首を傾げ、改めてじっと鬼鮫を見た。

「・・・それに、きっと優しい人だと思います」

気持ちや心などという愚にもつかないものが在るとすれば、それが血を噴いた心持ちがした。

美瑠は仲間の方へ戻って行く。何心無く、鬼鮫に背を向けて。





美瑠を殺すのは簡単だった。

物理的に生きたモノの営みを断ち切るのは難しい事ではない。美瑠によれば、鬼鮫はその技に長けてもいる。

簡単だった。

更に任務とあれば、鬼鮫の仲間殺しは面目躍如とさえなる。

混濁した目で鬼鮫を見、美瑠は何故かと問うた。
幾人もの血がむせ返るように臭う中でさえ、美瑠は清々と香っていた。

任務。

また、私の希み。

胸のうちに答えを落とし、鬼鮫は美瑠の傍らに屈んだ。

しかし美瑠は鬼鮫のモノにはならない。

任務で殺した美瑠は犠牲者であって、鬼鮫の得物にはなり得ないのだ。

白い布に血の赤はさぞ映えるだろうと思っていた。期待は裏切られて傷みだけが遺った。

鬼鮫は美瑠を汚してしまった。二度と会えないこの好ましい女を。

風はもう吹かない。




/ 340ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp