第3章 雑談ー角都、サソリー
「お、サソリさんに受けましたよ、角都さん」
「意外でもない。こいつは存外笑いの沸点が低い」
「うるせえ。ほっとけ。俺の笑いの沸点が低いから何だってんだ?オメェらに関係ねえだろ」
「いや、おゆ・・・」
「ヘソが茶ァ沸かすわ!お湯が沸きづらいとか言ってみろ?バカちゃん人形にしてやらァ!!あァ!?バ牡蠣殻!」
「ぶ・・・ッ、バカちゃん人形・・・ハハハハハハ」
「うるせえ!ツボってんじゃねえぞ、魚屋が!」
「魚屋じゃありませんよ。いい加減覚えて下さい。全くどこで勘違いしちゃったんだか・・・」
「やかましい。揶揄だろが。何か俺が物覚えの悪ィバカみてぇじゃねえか。察しの悪ィ女だな?あ?」
「鬼鮫と連んだら魚屋か。じゃ暁は築地市場みたようなものだな。カーレットでチキンレースでもするか?優勝者には飛段の捌いた虎ふぐを奢るぞ」
「死ぬのがわかってて誰が食うか。ソクラテスじゃあるめぇし」
「あの恐妻家は食って死んだのではない。呑んで死んだのだ」
「暗喩だろが。たく、どいつもこいつもクソ面白くもねェ」
「サソリさん、好きな作家は?」
「何だよ、いねえよ、そんなモン」
「またまた。教えてくださいよ」
「サソリはイプセンかゴッデンだろう?」
「人形の家か。安易だな。下らねえ」
「ウィニー・ザ・プーか?」
「ぬいぐるみじゃねえか。興味ねえ」
「クルミ割り人形か?」
「どんだけ簡単な人間だと思ってんだ、俺をよ。あぁ?」
「因みに俺は菊池寛と有島武郎が好きだ。金持ちで気前のいいヤツに悪いヤツはいない」
「・・・俺ァオメエ程簡単じゃねんだよ。一緒にすんな。解り易いじじいだな・・・」
「好きな作家くらいサラッと言え。中二病の一種だぞ、そういうのは」
「しつけえな。江戸川乱歩と夢野久作だ。文句あるかよ」
「何で喧嘩腰なんですか。短気ですねえ。しかし江戸川乱歩と夢野久作ですか。好きな作家はいないなんて言いながらまったディープでダークなとこ持って来て、サソリさんの深層心理が垣間見えるようですねえ・・・」
「澁澤龍彦やら稲垣足穂なんかも好きな手合いだな。フ。芥川も好きだろう?」
「クトゥルフ神話なんかもお好きじゃないですか?それかジョージ・マクドナルド?」
「文句あんのか?」
「いえいえ。サソリさんらしくていいと思いますよ」