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閑話休題?ーNARUTOー

第13章 何故だか自然と甘くなるー鬼鮫ー


「行って要りません。もういいですよ。自己責任でどうぞ」
「自己責任以外の何があるんです?私が呑むと言ってるんですから問題ありません。あなた、その不憫な頭で色々考えてこれを作ったんでしょう?私にはそこが意味深い。お陰で甘酒はどうでもいいものではなくなりましたよ」
温まった徳利と湯呑みを取り出して、鬼鮫は淡々と言った。徳利の底に指を添えて温度を確め、棚から出した布巾で湯呑みの水気を手際よく拭う。
「頭を捻りながら堂々巡りしていただろうあなたを思うと、フ、笑わずにいられません」
「はー・・・」
牡蠣殻は半口開けて諦めたように鬼鮫を眺めた。その視線を受け止めた鬼鮫の目が少し和んだ。
「僻むんじゃありませんよ?可愛いと言ってるんです」
「・・・おっと・・」
「その間中、私の事を考えていたんでしょう?」
「わはははははは!あー・・・・・失礼します。私、用を思い出しましたよ」
立ち上がった牡蠣殻の手を鬼鮫の手が捕らえた。
「本当に逃げてばかりいますねえ、あなたは」
片手で器用に機械瓶の栓を開け、湯呑みに注ぎながら牡蠣殻を見もせずに眉をひそめる。
「私があなたの心根を可愛いと思ってこれに口をつけるのが自己責任であるなら、私に対して幾度か恋しいと口走ったあなたが互いの間に生じるものを受け止めるのも自己責任と思いますが、どうですか?」
「はあ」
痛い顔をして牡蠣殻が座り直す。
「よろしい」
鬼鮫は湯呑みを煽って伏せた。
「多分大変率直に話されてるんだろうとは思いますがね。ややこしく思うのは私の頭に問題があるからでしょうか」
「あなたという人は問題という問題を山のように抱え込んでいるように思いますがね。ここではチョロチョロ逃げ回って物事に真摯に向き合いたがらない情けない姿勢が問われていると思いなさい。何からどこへ逃げようって言うんですか、あなたは」
「逃げるつもりじゃないんですがねえ。いたたまれなくなるんですよ。ところで手を離しては頂けませんか?」
「離しません」
「じゃ一つ真摯に向き合ってみますか?」
「ほう。どうするんです?」
言った鬼鮫の手を持ち上げて、その甲に牡蠣殻が唇を寄せた。
その行為の唐突さと覚えのある乾いた感触に、鬼鮫は眉を上げる。
 牡蠣殻は鬼鮫の手に口をつけたまま、にやりと笑って柳の葉のような笑顔を見せた。
「男女逆じゃないですかね、これは」

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