第13章 何故だか自然と甘くなるー鬼鮫ー
「ぅえ・・・止めて下さい。手前のヘマにぬるい事を言われると痒くなる」
「フ。牡蠣殻さん?」
「あぁ?何です?」
「殺したくなりましたよ。いいですか?」
「ホラ出たよ。いい訳ありますか。何なんですか、その発想は。どういう思考経過を経ればそういう並外れた頓珍漢が出て来るんです?もうね、ちょっとどっか行って下さいませんかね。今から一人でゆっくり甘酒の熱燗割りを呑みながら反省会なんで忙しいんです」
「一人でゆっくり忙しい?何言ってんですか、あなたは」
「うるさいな。文句があるならネズミーランドの露出癖剥き出しの黄色い熊に言って下さい。何もしないをするくらい忙しいんですよ、私は」
「甘酒の熱燗割りねえ。また昼酒ですか。仕様がない。頂きますよ」
「わぁお!徹頭徹尾通じてませんね?ちょっと心配になって来ましたよ。大丈夫ですか、干柿さん?幻聴と幻覚に溺れてませんか?レインボーマッシュルームカマーン状態になっちゃってません?怖い怖い。言ってて怖くなって来た。Drugはdo luckじゃありませんよ?いい事な・・・ぃだッ」
大きな手でバチンと額をはたかれて、牡蠣殻は屈み込んだ。
「はー、いっつゥ・・・・病み上がりの人間に何をするんですか」
「病み上がりなら病み上がりらしく大人しくしなさい。うるさいんですよ、あなた」
鬼鮫が片手を腰に当てて眉根を寄せる。
「人が可愛らしいと褒めているんですよ?素直に喜んだらどうなんです?」
「・・・・あー・・・ありがとうございます?」
「何で疑問符が付くんですか。もういっそ不憫になって来ますよ、あなたのそういうところ」
「可愛らしいの後に面白い付いて来ましたよね?手放しで喜べるものかどうか考えますよ、そりゃ」
「面白いじゃないですか?バレンタインに甘酒でしょう?しかもあなた、誰にも渡せないものを作ってしまってる。フ。上出来ですよ」
「・・・成る程。それは面白いですね。失敗に次ぐ失敗をやらかしてますからね。確かに笑えます。はは」
「誰にも渡せないというのがいい。気に入りました。うまく出来てるといいですね。楽しみですよ」
「話聞いてましたか?風邪引きますよ?」
「私が風邪なんか引くと思いますか?」
「風邪引かない人なんかいません」
「私は引きませんよ、馬鹿馬鹿しい」
「馬鹿馬鹿しいというより、馬鹿ですよ。その発言は」