第10章 雪合戦ーサソリ、飛段、デイダラ、小南ー
「・・・・プチッつったか?うん?」
デイダラが藻裾を見返って首を傾げる。
「プチッつったな。うん」
朦朦と巻き上がる雪片の群れに目を凝らして、藻裾が頷く。
「はああ、肩ァ凝ったわ。流石に悟空級の元気玉ァぶん投げんのァ骨が折れらぁ」
肩を回してコキコキいわせながら、飛段がニンマリと笑った。
「・・・また降りが激しくなって来たわね」
窓から小南が顔を出した。
確かに羽毛のように降り積もり続けていた雪が、その大きさと勢いを増している。
小南は僅かに眉をひそめながら面白そうに降り積もる雪を見やり、次いで雪まみれの面々を見渡した。
「イタチがお汁粉を作ったんだけど食べる?作ってる間中目が据わってたから、万に一つの風味絶佳ね。言わば、奇跡の餅入り餡子汁」
「食べる?食べますよ、そりゃ!餡子マエスチョロのミラクルスウィーツでショ?ヤバ、絶対旨いっショ、そりゃ」
藻裾がカッと目を見開いた。
「マエスチョロ・・・チョロッてオメエ・・・なんか可愛いな、うん。マエスチョロ。プッ」
「あー俺も食う。やっぱ体動かすと腹ァ減ンよな!」
「なら早く来た方がいいわ。他でもないマエスチョロが平らげかねない勢いでわんこ汁粉を始める前にね」
小南は窓を閉めかけて、降り積もる雪に逆らって雪が舞い上がる辺りを不思議そうに眺めた。
「・・・・雪が沸いてるけど、どうしたの」
「あ、そりゃ旦那が埋まってンだ、うん。良けりゃ掘り出してやれよ、小南」
飛段と藻裾に続いて中に入りかけたデイダラが外套の雪を払いながら頷いた。
「オイラは忙しいから無理。うん」
「ふうん」
小南は興味を失った様子で鼻を鳴らした。
「まあ気が向いたらね」
絶対気など向かなさそうに言うと、キッチリと窓を閉める。
後には雪があるばかり。
「・・・・チクショウ・・・・覚えてろ、アイツら・・・まとめてブッ殺してやる・・・」
雪山の下で、サソリが力なく呟いた。
「・・・流石に重い・・・気がする・・・重いよな、こンくれェ雪が載ってりゃそりゃ重い、重いに決まってらあ・・・・あ?」
フと気配を感じて目を向けると、牡蠣殻が傍らに屈み込んで小さな雪ダルマをソッとサソリの目の前に置いた。
雪だるまは側頭部に小さな朽葉を貼り付けられている。
サソリは目を上げて牡蠣殻を見た。