第10章 雪合戦ーサソリ、飛段、デイダラ、小南ー
「素晴らしい。それはいい考えです。部屋に戻って整理整頓に専念しましょう。せいぜい頑張って隷属コースに頭から突っ込まないよう気を付けて下さいな」
大事な本を小脇に抱え、さっとキビスを返した牡蠣殻の後頭部で雪玉がスパーンと炸裂した。
「・・・・・・・・」、
立ち止まった牡蠣殻が、頭の後ろを無言で撫で付ける。
ヒルコの長い尾が、機嫌の悪い猫の尻尾のようにクルクルと円を描く。
「どォしたよ?整理整頓して来いよ?あァ?あぶッ、ガハ・・・ッ、誰だチクショウ!」
額に雪玉を食らってガクンと首を仰け反らせたサソリが、ぐっと頭を起こして目を三角にした。
「オイラだ、旦那!まだチーム分けしてねえのにフライングしちゃ駄目だぞ?うん?なあ、反則は頂けねえ、ぞッとコラァ!!!!!」
にやにやしながらデイダラが、力一杯振り被って大きめの雪玉をヒルコの肩の付け根目掛けて投げつけた。
ドバンといい音がしてヒルコは雪まみれになる。
「ぅぐは・・・ッ、テ、テメエこの野郎、関節狙って来てんじゃねえぞ、ゴラ!」
「あン?いいとこ当たっちまったか?よォ聞いたかイモ裾、関節だ関節。関節狙ってけ、うん。バンバン行くぞ、オイラァ今日一日旦那を弟子にしてやんだ!旦那の傀儡もオイラの芸術色に染めてやらァ!」
「下らねえ事言ってんじゃねえぞ、ゴラ?誰がテメエの弟子になブハッ」
「関節なんてメンドくせえよ。顔狙ってけ、顔。バンバン顔。その内落武シャンがもげてかンわいらしい顔が出てくらぁ!したらそっからが本番だいィィ!!!気ィ失うまでマジ顔狙いだァ!!!」
「やめ・・ブアッ、こら、ヤ・・・グハッ、陣取りじゃなかっ・・・・ブハ、ガッ、ま、待て、グラァ!!!!」
デイダラと藻裾が嬉しげに絶え間なく繰り出す雪玉に翻弄され、ヒルコの頭が右へ左へ忙しなく行き来する。
「ふ、ふざけんなテメエら、チ、チーム分けしろおォォォ!!!!」
「誰も相手にしてくンねンだよ、チックショオオォォォォ!!!!」
視界が再び暗くなって、サソリはギクリと身構えた。
飛段がオラ悟空級の元気玉を持ち上げて、吠えている。
「雪合戦しよおォぜ!俺も入れろや、おいィ!!!ブッ。アハハハハハハアァ!!!ぁ、ど、っこいしょっとおォォッ!!!!」
「ゥおッ」
ずぅんと、腹に来る重低音がしてドバーンと雪が舞った。