第10章 雪合戦ーサソリ、飛段、デイダラ、小南ー
「いや、いーからじゃなく。風邪引かないで下さいよ?周りが往生します」
「往生すりゃいいじゃねえか。俺ァ頑張っちゃうよお?」
ふんぞり反った飛段にデイダラが首を振った。
「人数があわねぇぞ?誰か連れて来いって、うん」
「誰かって誰よ?」
「誰だっていんだよ、ンー、ま、味方にしたら勝てそうなヤツ?」
「おォし、わかった。誰か連れてくっから待ってろ。ぜってェ待ってろよ?いいか?」
後ろ向きで歩きながら、こちらを指差して念を押す飛段に藻裾が朗らかに手を振る。
「やる気満々だねィ?ウハハ」
サソリが同じく飛段を見送りながら、ヒルコの顔でにやりと笑った。
「マスターは何吹っ掛けたっていんだよな?汐田」
藻裾もにやりと笑い返す。
「じゃなきゃ詰まんねえデショ?」
「よおし、バ牡蠣殻。俺と組め」
牡蠣殻は呆れ顔も極まった呆れ顔をした。
「何を明らさまに企んでるんです。誰が落武者テイストの幸先悪い相手と勝負かけますか?アンタ負け戦の大看板そのものなんですよ、落武シャン。まして合戦なんて名のつくものでアンタに寄っ掛かるような不吉な真似は誰しも薄笑いでお断りです」
牡蠣殻は言葉通り薄笑いで掌をサソリに押し向けて後ろに下がった。
「まあアンタがナポレオンテイストのビジュアルでも私は絶対に組みゃしませんがね。早いとこ東京タワーに行っちまいなさいよ、錆びないうちに」
「だから錆びねえって言ってんだろ、バカタレ」
「ホントは錆びるんでしょう?」
「まあな」
「・・・何をどうしたいんだ、アンタは。少し頭の中身を整理して出直しなさい」
「俺は片付いてんのが好きだが整理整頓は反吐が出る程嫌いだ」
「馬鹿って言ったら馬や鹿に申し訳ない程馬鹿な事をよくもまあ平然と言いますねえ・・・落武シャンはオラ飛段さんに元気玉食らってインドに行きなさい。ガンジス河に漬かってゴータマ・シッタールダの背中でも流してきなさい。私は部屋に戻ります。ご機嫌よう」
「何がご機嫌ようだ。小堺一機かテメエは」
「ああ?聞き捨てなりませんね?叶姉妹に謝りなさい」
「・・・テメエこそ頭を整理整頓しやがれ」