第45章 初仕事 ー飛段、角都ー
「ツーマンセルだ。残念ながら」
「なら2で割れるじゃねえかよ。何なんだよ、耄碌してんじゃねえぜ、爺ィ」
「爺ィ?お前の敬老精神の底の浅いことと言ったらアスファルトにうっすら張った水溜り程度だな。500軒励め」
「知らねえよ、アスファルトもアスベストもアズカバンもよ!」
「何か混じったな」
「どーしても俺ひとりにやらせる気かよぉ!?おかしいだろが!?」
「俺は雪下ろしの人の為の甘酒作りを手伝う。お前には人の口に入るものなど作らせられないからな」
「甘酒ェ?」
「嫌いか」
「いや…別に普通?」
「そうか。まぁどっちにしろ俺の作る甘酒にお前の分はないからどうでもいい」
「…ああそう…。いや別に構やしねえが気ィ悪ィなぁ。やらせるだけやらせて労りもしねえってひでぇだろ?何なんだよ、おめぇはよ」
「何だって相方だろうが。残念ながら」
「残念なのはこっちだわ」
「お互い様ということだな。仕事仲間ならそれくらいが丁度いい。退職後の後腐れがない」
「暁に退職なんてあんのか」
「ないとすればお前はずっと暁にいるつもりか」
「いやぁ、少なくともおめぇとは死が二人を分かつまでって仲になるかと思ってたんだけど」
「…何言っちゃってんだ?まだ1月なのに今年一番の鳥肌が立ったぞ?お互い死に辛い俺たちがそんな仲になったら半永久的に一緒ってことだ」
「あー。そうか。そういうことになるかなぁ。ははッ」
「はは?…今凄く死にたくなった…。生まれて初めて死にたくなったぞ…!?」
「またまたぁ〜。死なないくせによく言うぜ」
「…だからゾッとしてるんだろう?何でわからないんだ…いや、いい。黙れ。何も言うな。何を話しても俺の絶望が深まるばかりだ。何も聞きたくない。とっとと仕事に行くぞ、金」
「また金呼ばわりかよ」
「お前という存在を俺なりに割り切らないと絶望のあまり死にたくなる」
「お!やっぱ250ずつでいっちゃう?だよな!俺ら相方だもんな!割り切った方がいいよな!ピッタリ割り切れちゃうなら喧嘩にもなんねえしな!げははッ」
「………」
「何そのドス黒い顔?顔中隈だらけみてえになってっぞ?気持ち悪ィな、おい角都ゥ!もしかして死にかけてんの?またまたまたぁ〜。げはははは!…あら?マジ?やだじいちゃん、新年早々縁起でもねえったら鬼の撹拌?」