第37章 メンドくせぇー路地裏イチャイチャinシカマル&いのー
「……お前なぁ…。訳わかんねぇとこで泣くなよ。ビックリすんじゃねえか」
シカマルは溜め息を吐いて立ち上がり、ぼろぼろと泣くいのを引っ張りあげた。この路地裏で騒いだら、反って目立ってしまう。日頃気の強い幼馴染みの泣き顔を人目に晒すのはシカマルの本意ではない。
「いいか、いの」
両の手でいのの頭を捕まえて、シカマルはぼたぼた涙を落とすその目を覗き込んだ。いつも強気な碧の目が涙で霞がかって、思いがけなく柔らかな光彩を放つ。
メンドくせぇヤツ。
内心苦笑いしながら、シカマルはいのの額に自分の額をこつんと重ねた。
「明けても暮れてもイノシカチョウなのはしょうがねぇ。俺たちはそういう生まれ同士なんだからよ」
「うわーん!」
「うわーんじゃねえだろ。下らねぇ事で泣いてねぇでよく聞け」
ごつんと額を重ね直して、シカマルは更に間近くいのの目を覗き込んだ。
「サスケの写真なら何とかしてやる」
「?」
「俺たちなら隠し撮りじゃねえサスケの写真が撮れるぞ(多分)」
「え!?」
「考えてみろ。サクラはそんな事誰にも頼めねえんだぞ?女子の身じゃ撮れる写真にも限界があるし、頼めそうなナルトやリーさんは、あの通りの天然だ。まず間違いなく結果は期待出来ねぇ」
「ふんふん」
シカマルの両の掌の中で小刻みに頷くいのからいい匂いがする。いつものいのの匂い、洗髪料と山中花店の生花の香り。
「オメーには俺とチョウジっていう味方がいる」
「ふんふん」
「写真撮って来てやるから、サクラにサスケの写真を返してやれ」
「わかった」
「昼飯もちゃんと食え。任務もちゃんと務めろ。ダイエットはほどほどにしろ」
オメーはバカでもねぇし可愛くなくもねぇんだからよ。
もう一度、ごんと額をぶつけて、シカマルはいのの頭を離した。指の間をいののサラサラの髪がするする通り抜けて、綺麗な残り香が香る。
そう、いつも思う。いのの香りは綺麗だ。生花が匂うからかも知れない。
いのが離れた途端、路地裏の据えた臭いが鼻についた。今までいのがすぐ側に居たから気付かなかった。
「わかったらほら、行くぞ。ついてってやるからサクラに写真を返しとけ」
「いい。余計なお世話。ちゃんと自分で筋通すわよ」
「昼飯のついでだよ。ちゃんと返したら飯奢ってやる」
「マジで?」