第35章 海へ来たらば ー暁with黒の教団ー
大きな鳥が幾つもの小さな光の塊になって楕円に広がる。白、柔い黄、薄橙、淡緑、一際目立つ紅。楕円を陣取った光の群れが波を打って雲の形をとる。
「うん?ちっと足りねえか」
デイダラが懐から小さな起爆粘土を取り出して放り投げ、印を結ぶ。小鳥の形をとって飛び上がった起爆粘土はみるみる空を昇り、雲に尻尾を着ける格好で跳ね上がって紅く光った。
「仕上げだァ!!」
待っていたように光の群れが弾け飛ぶ。
どどんッ
鮮やかな紅い光がクッキリと尻尾の跳ねた綿雲を浮かび上がらせ、他の光がとりどりにそれを彩る。
「おしゃーッ、かーぎやァーッ!!見やがれチクショウ、大成功じゃねえか!!うん!?」
デイダラが嬉しそうに得意満面でガッツポーズをした。
誰も反論しない。目線は空に注がれたまま。
パラパラパラ…
あっと言う間に綿雲の光は淡くなり、細かな名残りを空に枝垂れて海へ散り始める。
華やかに開いて儚く泡々と海へ消え落ちる、一発限りのデイダラの花火に皆口を噤んで見入った。
花火と一緒に人影も海に落ちて行ったように見えたが、誰も何も言わない。ー合掌ー
「何だ何だ、やるじゃねぇか、デイダラ。正直スゲービックリしたぜ。爆発じゃなくて花火だったな!」
飛段が拍手してデイダラを褒めた。
「暴発じゃなくて打ち上げだったしなァ。やりゃあ出来んじゃん、ダラッダラ」
ちょっと残念そうに藻裾が笑う。そんな藻裾を横目に、デイダラは踏ん反り返って鼻息も荒く腕組みした。
「ザマーミロ!だから言ってるだろ。俺ァ天才なの!芸術家なの!わかったか、うん!?……何で残念そうなんだよ、オメェはよ?うん?」
「予想外に良いものが見れたな。これなら金が取れる」
角都が冷えたイカ焼きをデイダラに突き出した。
「…何コレ…。七百両なら払わねえぞ、うん」
「俺の気持ちだ。特別にくれてやろう。食うがいい」
「カッチカチのイカ焼きが?……うん、まあ、物凄くオメェの気持ちらしい感じだけどよ。…要らねぇな…」
「しかし流石だ。日頃火遊びばかりして来た集大成が文字通り花開いたな。如何に傍目に下らない遊びであっても何かに打ち込むのは必ずしも無為ではないという事だ」
「何で成功した挙句そんな言われなきゃねぇんだ、俺はよ。うん?イタチ」