第35章 海へ来たらば ー暁with黒の教団ー
デイダラの印を結ぶ手が加速し、いつもなら飛行用にするくらいの大きさの粘土の鳥が角太郎の陰から滑り出た。
「…デカイな」
腕を組んだイタチが呟く。
「やべぇんじゃねえのか、アレが破裂するんじゃ」
ヒルコのイタチが身を守るように蹲る。
「この夏最大のイベントになんぞ、これ。まあ浮いた話もねぇティーンズは火遊びして欲求不満解消すんのが一番だぁな」
飛段が感心しつつも痛々しげにデイダラを見る。
「だーら聞こえてんだっつの!聞けよ、話を!!見ろよ、俺じゃなく花火をよ!!」
喚くデイダラを他所に小南が目を眇めた。
「…あら?」
「何かついていっているがアレはリーダーじゃないのか?」
同じく角都が目を眇める。
「ダメダメダメダメ待て待て待て待て!こんなデカイ爆弾危ないって!!陰陽まとめてびっくりしちゃうって!!!」
確かにペインだ。
角都は感心したように腕組みした手で顎を撫でた。
「随分と足が速いな…。大したものだ」
ペインが走る。走って走って頑張って走って、鳥型の起爆粘土に跳び乗った。
「あーーーッ!!!!」
全員の声が重なり、それが合図だったように浜を這い飛んでいた鳥が海上に飛び立つ。
「あーーー……」
またも重なる全員の声に送られて、ペインは起爆粘土共々中空へ舞い上がった。
「…何やってんですか、あの人は…」
鬼鮫の呆れ声にサソリが爆笑した。
「ぶはははははッ、何ってオメェ、打ち上がっちゃったんだよ、アレは!げほ…ッ、ぐ…、く…くく…、だ、駄目だ、何だアレ、馬鹿だなオイ!!アハハハハハハハハハハハッ」
「あそこまでして何で止めなきゃねんだよ。何だ、アイツは?うん?」
鳥とペインを振り返り振り返り、皆に合流したデイダラが頭を掻いた。
「…アイツはリーバーと南に仁義を切ったのだ…」
空を見上げてイタチが鹿爪らしく言う。
「うちのリーバーも立派な漢だった…」
「…あ?だから誰だよ、リーバーってのはよ?うん?」
デイダラが同じく空を見上げながら、あやふやに尋ねた。イタチが答えようと口を開く。
刹那、カッと起爆粘土が破裂した。
「やたッ!!たァまやーーー!!!!」
はしゃいだ藻裾の大向うさながらの掛け声が上がる。