第35章 海へ来たらば ー暁with黒の教団ー
「それは直すべきところがあり過ぎて訳が分からなくなっているだけだ。教科書を開いても何処がわからないのか分からない学生の如く」
「そんな経験はない」
「…お前教科書開いた事あるのか」
「分からなかった問題などなかったぞ」
「分からなかった事にすら気付いてないだけじゃないのか?飛段と変わらないな…」
「馬鹿言えよ。俺ァ教科書開いた事なんかねぇぞぉ」
朗らかな飛段を牡蠣殻の襟首を掴み上げた鬼鮫が呆れた目で見る。
「馬鹿を言ってるのはあなたですよ」
堪りかねたように言うのに、小南がフッと笑った。
「皆大差ないわよ。あなたも似たようなもんなんから安心しなさい、鮫」
「…あなたはそろそろビールは止めた方がいいんじゃないですか?何時になく陽気になってますよ。気味の悪い…」
「生臭い魚介類が生意気な口をきくわね?酒の肴にするわよ、鮫」
「…鮫鮫いい加減にしないと面倒を推して削りますよ、クリネックス」
「誰がクリネックスか。私は専らネピアの鼻セレブだ。エゲレスで食い残されてろ、フィッシュアンドチップス」
「小南さん、フィッシュアンドチップスなら断然鱈ですよ。鮫なんかあまり美味しくな…げぶ…ッ」
背中を平手で叩かれた牡蠣殻が新生児のようにゲップをする。
「無作法な人ですねぇ…」
手をはたきながら鬼鮫がフッと笑う。
「…がは…ッ、何故私だけこんな目に合わせるんです。不平等ですよ、干柿さん」
「仕方ないのよ、牡蠣殻。そういう設定なんだから」
小南に言われて牡蠣殻はげっそりした。
「…設定…」
「あ…ッ、止せ!印を結ぶな!危ない!止めろコラ!!!」
ペインが叫ぶ。全員の目がまたデイダラとペインに集まった。
「四の五の煩えな!黙って見てろ!おいコラ汐田ァ!!小便チビんじゃねえぞ、うん!?」
デイダラが気持ち良さそうに歯を剝いて笑った。
「おー、ガンバレー」
ニヤニヤしながら手を振った藻裾が、誰にとも無く尋ねた。
「何スかね、あれ。スゲー顔で笑ってますけど、芸術家の狂気ってヤツすかね。キマっちまってるようにしか見えねぇよ」
「若気の至りだ」
「中二病発病してんだよ」
素っ気ないイタチとサソリの一言に藻裾が爆笑する。
「聞こえてんぞ、テメェら!チクショウ、これ見てビビりやがれ!!」