第35章 海へ来たらば ー暁with黒の教団ー
「…困りました。いよいよ合わせる顔がありません」
「合わせる事ありませんよ。あの人たちに会うのが目的でここに来たんじゃありませんからね。大体あなたたちが顔を合わせると煩わしくて仕方ない」
「雪さん意外に干柿さんに容赦ないですからねぇ。見習いたいところです…」
「見習いたければ見習いなさい。見習った後の始末は神のみぞ知るですよ」
鬼鮫はにやりと歯を剝いて笑い、ビールを呑み干した。怖い。
「鬼鮫ェ、も一本いくかァ」
のんびり声をかけて来た飛段の勧めを掌を立てて断り、鬼鮫は牡蠣殻を見下ろした。
「さっきも言いましたがね。時間が有り余っている訳じゃないんですよ。あの人たちに絡むのは後日改めてにしなさい」
「とは言えなかなか会えないのが実情で」
「あなたと私もそうでしょう」
「そりゃまあそうですがそれとこれとはまた話が別ですよ」
「どう別なんです」
「どうって、雪さんと鬼鮫さんじゃ種類が全然違………」
「やめろぉお!!!!デイダラァ!!!!!」
言いかけた牡蠣殻がペインの悲鳴に口をパチンと閉じた。鬼鮫も面倒そうにまだ揉めているデイダラとペインを見やる。
「上げたいなら上げさせてやればいいのよ」
小南が缶ビールを揺らして残量を確かめながら笑った。頬がほんのり紅い。酔ってきているようだが、一体何本呑んだのか。
「ああゆうおせっかいがやけんのはうちじゃアイツだけだかんなァ」
モンパの木の細い幹に肩を預け、飛段が生温かい目でペインを眺める。
「だからリーダーなんだろ。面倒を面倒と思わねぇ鈍さがアイツのいいところだ」
言葉の内容とは裏腹に心底どうでもよさそうに言ったサソリにイタチが切れ長の目で流し目をくれた。
「お前が人を褒めるとは珍しいな」
「…人の話はちゃんと聞け、イタチ。俺には褒め言葉は聞こえて来なかったぞ」
渋い顔で言った角都へイタチの流し目が動く。
「それは老年性難聴だ、角都よ」
「…言っておくがイタチ。俺は鬼灯の冷徹もビックリの地獄耳だ。いい加減にしないと打ちのめすぞ」
「お前とやり合うのは気が進まない」
「…ほう?」
「老眼で俺の目もよく見えないだろう?月読の効きが悪そうだ…。面倒臭い」
「…ほう…。いよいよお前を打ちのめす時が来たようだな、イタチ。そこへ直れ」
「直らない。俺に直すところなど何もない」