第35章 海へ来たらば ー暁with黒の教団ー
鬼鮫と牡蠣殻が顔を見合わせた。鬼鮫がイタチを見る。イタチは首を振って宇治金時を食べ終えて後退さった。角都は畳んだイカ焼きの屋台を引いて角太郎とデイダラからより距離を取り、それを見たサソリと飛段が木立ちへ向かい、小南はペインを置いてさっさとふたりに続く。
ペインは手を上げてデイダラに声をかけた。
「花火はお前がいつも扱ってる粘土とは訳が違うんだぞ!?危ない事は止せ、デイダラ。花火ならビーチの陽キャが素敵なのを上げてくれてるじゃないか。爆発物の暴発で折角の花火を台無しにする気か!?」
遠目にもハッキリデイダラがムッとするのがわかった。
「台無しって何だァ!?俺を誰だと思ってる!俺はなァ…ッ」
「爆発マニアの陰キャだろ!?素敵な夏の思い出を吹き飛ばすのは止めろ!何だかこっちがあっちを僻んじゃって妨害行為に走ってるみたいになっちゃうじゃないか!そんなの悲しいだろォ!?」
説得しているつもりでデイダラを煽り立てながら、ペインが角太郎の方へ向かう。
「うちのリーダーは天然だな…」
それを見送ってイタチが呟いた。
「…オメェに言われるんじゃ本物だな…」
飛段から受け取ったものの持て余したきりだったビールを、牡蠣殻を引っ張ってメンバーに合流した鬼鮫に投げてやったサソリが薄笑いする。
「あんな風に言われたらデイダラはいよいよ絶対に止めないでしょうね」
プルタブを起こしてビールを牡蠣殻に差し出すも、牡蠣殻に首を振られて鬼鮫は妙な顔をした。
「何を打ち上げるつもりなんですかね、デイダラさんは」
そんな鬼鮫をよそに、牡蠣殻は腰に手を当ててにやにやとペインとデイダラを見守っている藻裾を見た。
「本人は花火を打ち上げるつもりらしいですよ。いつもの粘土のバカデカイバージョンをあれこれ捏ね繰り回してましたから、まあ何かしら爆発するのは間違いないんじゃねえですかね。あの量じゃスゲー事になりますよ!大丈夫じゃねぇだろうなー、アイツ。わははッ、楽しみですね!牡蠣殻さん!」
「楽しみ…ですかね、それ」
「デイダラが爆発するんですよ。絶対笑えますって!」
「ああ、汐田さんは笑うでしょうねぇ。そりゃあもう腹が割れるんじゃないかってくらいに笑うでしょう」
「大丈夫!デイダラは絶対牡蠣殻さんも笑わせてくれますよ!こういうときだけは期待を裏切りませんから、アイツは!」