第35章 海へ来たらば ー暁with黒の教団ー
「馬鹿言え!あれくれぇ俺にだって出来るわ!」
「じゃやってみろよ。あらー、楽しみだわー、デイダラくんの暴発物」
「暴発じゃねぇ!爆発だ!」
「爆発と花火は全然違うぞ」
イカ焼きの屋台を畳みながら角都が冷たく言う。
「何だっていーじゃねぇかよ。だはー、やっぱ夏ン花火は盛り上がんなぁ」
飛段がクーラーボックスからビールを引っ張り出して角都に投げてやる。
「おい、勝手に呑むな。一本六百両だ」
眉根を寄せた角都の背後でドンと二発目。
「んー?リーダーに付けとけときゃいいだろォ?オメェの分も付けとけよ」
プシッとプルタブを起こして、飛段は呑気に乾杯のポーズで缶ビールを持ち上げた。
「リーダーの奢りか」
角都の眉間の皺が薄くなる。
「そうそう、リーダーの奢り。な!リーダー?」
ドンと三発目。
ペインと小南にそれぞれビールを放って、飛段が朗らかに笑った。
「ん?何だ?くれるのか?悪いな」
振り落ちる花火のパラパラいう火薬が弾ける音の中、小南に引っ叩かれて顔を腫らしたペインがビールを受け取る。肝心なところを花火の音で聞き逃したらしく、嬉しそうにニコニコしているのが居た堪れない。
「呑むか、小南」
「呑むわよ、勿論」
眩しげに花火を見上げていた小南が、ペインの差し出したビールを頬に当てて薄く笑った。
「花火にビールなんて気が利くわね」
珍しく素直に嬉しそうな小南にペインが目を丸くして、次いでほんのり耳を赤くした。
「ご馳走様、ペイン」
…ペインの聞き逃した肝心なところを小南はキチンと聞いていたらしい。美味しそうにビールをひと息に煽ると、角都にお代りを要求する。
「お前も呑むか?」
角都が浜に迫る木立ち近くに鬱蒼と立ち尽くすサソリに声をかけた。ペインの奢りと決め込んで気前が良くなっている。
「そうだそうだ、オメェも呑んどけ。呑んで錆びとけ。折角海に来たんだ、ハメ外さねぇとな!人造物も!げはははは!」
飛段に言われてヒルコのこめかみがピキと音を立てた。…よく出来た人造物なのだ。
「おいコラ」
四発目。
「俺は呑み食い出来ねんだってホントに何回言ったら覚えんだ、オメェらは…」