第5章 忘却のマーニーーデイダラ、イタチ、サソリ
「いえいえいえ、元々宵っ張りですから」
「美容に良くないな」
「び・・・美容・・・まあそう言いますね。イタチさんはいいんですか?夜中にオハギなんて食べたりして、美容どころかお身体に障りますよ」
「・・・その言い回しは止してくれ。豆は良質な植物性たんぱく質だ。体に良い。だから大事ない」
「三段論法の教科書みたような事言われますね。要するに飽くまで食べるつもりだと?」
「譲れない」
「いや、譲って要りませんけど。干柿さんに見つかったらうるさいですよ。気を付けて下さい」
「フ、例え鬼鮫が相手でも思い立った俺は止められまい。もう体が餡コを欲して止まない状態だからな。留め立てするなら始末してでもオハギを食う覚悟だ、俺は」
「いいですよ、そこまで思い詰めなくても。好きに食べて下さい?たかがオハギで人を始末するもんじゃありませんよ。・・・流石干柿さんのお相方だな、オイ・・・」
「しかしトロルと言えば"3匹のやぎのがらがらどん"だが、あの絵本のトロルはトトロとは似つかないな・・・。北欧の妖精だと言うが、結句トロルとは何なんだ?」
「トトロが何からトロルが何に疑問が移行しましたねえ・・・」
「想像上の存在は伝承があまりに多様性を帯びているせいで、脚色された作品のイメージが先行してしまいがちだ。指輪物語、ハリー・ポッター、ルーンクエスト、ドラゴンクエスト・・・・ムーミン。・・・・ムーミンもか・・・」
「ムーミンですか・・・トトロはムーミンっていうよりモランじゃないですかね。怒る人多そうだけど」
「モランか。うむ・・・」
「ムーミンは名前にトロールとついてはいますが、トロルとは別物とトーベ・ヤンソン自身が言ってますしね・・・」
「そのトロルが何かはっきりしないのにそう言われてもな。彼女の中のトロルの定義はどうなっていたんだろうか」
「こうした類いの存在には定義自体あってないようなモノですからねえ。まあわからないってコトでいいんじゃないでしょうか。それぞれの解釈が正解・・・」
「・・・成る程、ではトトロはムーミン、これを総意としてオハギを食って寝よう」
「総意ってイタチさん。貴方も微妙に人の話を聞きませんね?それ、ご自分であの二人に説明して下さいよ?二人とも一筋縄じゃいきませんからね?簡単に納得しませんよ?」
「任せておけ」