第35章 海へ来たらば ー暁with黒の教団ー
「いや待て牡蠣殻。ちょっとあの連中に餡こを持っていないか聞いて来る。何故だかあの連中の誰かが必ず餡こを所持している予感で一杯だ」
キリッと言い放ったイタチに牡蠣殻は溜め息を吐いた。
「餡こなら角都さんが持ってますよ。清寿軒の大判どらやきの餡こを。グラム五千両で手を打つって言ってましたけどどうします?」
「清寿軒のどらやきの餡こ!?か…角都のヤツ、何故そんなミラクルな逸品を…」
「ミラクルだか何だか知りませんがグラム五千両ですよ?いいんですか?私にしてみればそのぼったくりの思い切りの良さがいっそミラクルですよ」
「何の問題もない。俺のバカンスはこれからが本番だ」
「ああ、そうですか。じゃあもういいですね?行きますよ?私も早く戻らないと、また意味も分からず干柿さんに引っ叩かれる羽目になりそうな雲行きなんで急ぎたいんです」
「いや、待ってくれ牡蠣殻。今ホントいいところなんだ…て、あ、あ、誰だアイツ!?ライバル出現!?」
風が巻いて砂や落ち葉、木っ端が舞う。失せる直前、目を瞬いたペインの視界に映ったのは、リーバーと南、そして手刀を切って文字通りふたりの間に割って入った橙色の髪に眼帯という出で立ちの若い男。なかなかの色男だ。
「ぅわあぁぁぁあッ!!!めっちゃ気になるうゥゥう!!!」
出歯亀の魂の叫びごと、牡蠣殻はペインとイタチを道連れに失せた。