第35章 海へ来たらば ー暁with黒の教団ー
「鬼鮫。オメェは何時までこの馬鹿女と連んでる気だ?馬鹿が伝染るぞ。早く始末しろ」
「この人との付き合いよりあなたとの付き合いの方が長いですが、まだ馬鹿は伝染ってませんからね。だから馬鹿は伝染らないと思いますよ。多分。人を巻き込む心配がないのは救いですね、サソリ」
「…テメェ俺が馬鹿だってか?」
「今の今まで散々馬鹿を曝け出しっぱなしの言い合いをしておきながら誰が馬鹿じゃないって言うんです?私に言わせればあなたたちふたりとも立派な馬鹿ですよ」
「俺に言わせりゃテメェの言いなりになってるバ牡蠣殻もバ牡蠣殻を連れ回してるテメェも立派な馬鹿だ」
「私からすると暁自体紙一重の方々の集まりなんですけどねぇ…」
「………」
「………」
「………」
「不愉快ですね」
「ムカつくな」
「厭な感じですねぇ」
「…兎に角さっさと小屋でも棺桶でも傀儡でも好きなものを作りに行って下さい。正直あなたのその顔を見てると腹が立って来るんですよ、サソリ」
「俺の顔を見ると腹が立つ?そりゃ鬼鮫、妬み嫉みだ。オメェのその顔じゃ誰彼構わず絡みたくもなるだろうが、増して俺が相手じゃな…」
「…サソリさん…?今のあなたはヒルコさんですよ…?←小声」
「…あ?」
「いつもの美顔じゃないんですよ。素顔より素顔らしい、あなたの内面が如実に顕れた"傑作ヒルコさん"のお顔でらっしゃるんですよ←小声」
「…ん?」
「黒の日傘がとってもお似合いです、ヒルコさん」
「………馬鹿にしてんだろ、牡蠣殻」
「それだけの事はある発言だったと思うんですよ。ヒルコさん美貌を妬まれるの巻」
「やかましい!」
「フ」
「…鬼鮫。鼻で笑ったか?」
「私は口でしか笑いませんよ」
「…プッ」
「バ牡蠣殻ァ!?」
「いや、笑ってません!口から堪えきれなかった何かがまけ出ただけです!」
「それァ失笑ってヤツだァ!!テメェいよいよぶっ殺す!!」
「ちょ、サソリさん、それは八つ当たりってヤツ…ぅうわお!」
ズシャンと牡蠣殻の立っていたところに水柱が立つ。間一髪で飛んで来た流木を避けた牡蠣殻は岩場に上がって慌てて靴を履いた。
「…何で動くんだ?あぁ?突っ立ってろって言ったよなァ?」
サソリの陰気な声が低い。怖い。マズい。
「そう言われて突っ立ってる人なんかいないって言いましたよね、私?」