第35章 海へ来たらば ー暁with黒の教団ー

「半周じゃ半端で気持ち悪ィな。一周りしろよ」

「それじゃ馬鹿になっちゃうじゃないですか」

「違うのかよ馬鹿」

「はは、サソリさんてば、ホント何処に行ってもクソ感じ悪いですねぇ。抜群の安定力ですよ」

「オメェは何処に行ってもクソ馬鹿だしな。…泳げねぇってホントかよ」

「…何言ってるんです。泳げますよ。ジャック・マイヨールか牡蠣殻磯辺かってくらい泳げますとも」

「ジャック・マイヨールは潜水だろうが」

「いや、それくらい水は友達と、そういう…」

「泳げねぇんだろ？」

「泳げますよ！」

「じゃ泳いで見せろよ」

「サソリさんも来るなら行きますよ。フ」

「テメェ今鼻で笑ったな？鼻で笑いやがったろう？」

「いいえ。私、笑うときは正々堂々と口で笑いますよ。あははははは」

「何がおかしんだよ」

「いや、サソリさん、多分海水につかったら錆びるんだろうなと思ったら愉快になってしまって……ふ…ふ…はははは！」

「……俺が錆びんのがそんなに楽しいかよ」

「え？そりゃ錆びないよりは錆びた方が楽しいですよ。だってサソリさんですよ？サソリさんが錆びたら楽しいに決まってるじゃないですか」

「死にてぇのか？」

「いいえ。全然」

「いーや。その顔は死にてぇ顔だ。殺してやるからちょっと来い」

「馬鹿ですかあなたは。逃げてる最中に待てって言われて待つ人がいないように、殺すから来いって言われて行く人なんかいませんよ。ははははは」

「じゃそこに突っ立ってろ。今この流木で吹っ飛ばしてやるからな。ああ、オメェはピクリとも動かなくて構わねぇ。親切だな、俺は」

「…そう言われて突っ立ってる人もいませんって。意外に間抜けな事ばかり言いますね、サソリさん」

「オメェに間抜け呼ばわりされるなんざ……死にたくなるな…」

「手伝いますよ」

「手伝わなくて良いからちょっと殴らせろ。思いっきり殴らせろ」

「それちょっとじゃないですよね？」

「ちょっとだ」

「いやいやいや」

「ちょっとも思い切りも対して変わりねぇ。大丈夫だ。何なら殴られるのも殺られるのも大差ねぇぞ？な？」

「なってサソリさん。何だか今日も変ですよ？それこそ大丈夫ですか？暑さで頭の動きを司る弦が弛んじゃったんじゃないですか？それかそんなモノ始めからないか…。何しろ変なのはいつもの事ですからねえ…」