第35章 海へ来たらば ー暁with黒の教団ー
言われて藻裾をじっと見ていたデイダラが、パチンと目を覚ましたように瞬きした。
「何?何だって?うん?」
「だからペインさんとこまで行って見ようぜって言ってんだよ。…何ボケてんだ?お前も熱中症か?小南さんに投げて貰うか?」
「…折角キレーな水着を着てもやっぱ中身はオメェだな…?オメェはホンットに女らしさのメーターが万年エンプティなんだな、うん…」
「ああ?どーでもいー事言うなー。詰まんねぇヤツ。行かねぇの?じゃ、いいや。飛段さーん、沖まで競争しましょうぜ!」
「いや、行く!行かねぇとは言ってねぇだろ!人の話は最後まで聞けよ!」
「げははは、行って来いよ。俺ァ邪魔ァしねぇよ。な!デイダラ?」
「何だよ。別に邪魔じゃねぇぞ。来たきゃオメェも来りゃいいだろ?変な気回すなよ。気味悪ィな」
「行ってもいいけど…」
ビーチマットに横たわり直しながら、小南がアンニュイに言う。
「その水着、紙よ?」
大人面してデイダラをからかっていた飛段の背筋が伸びた。藻裾の肩を抱いて海へずんずん歩き出す。
「よしじゃあ、行こうか、藻裾ちゃん。飛段さん泳ぎは得意だからね。何かあったら迷わず抱きついてくれちゃっていいからね。さあ行こう。すぐ行こう」
「ま、待て待て待て待てィ!飛段、この馬鹿!テメェわかり易すぎるぞ!みっともねえから止めろコラ!」
「わかり易くて何が悪ィ。俺はシンプルさが売りの色男なんだよ。文句があんなら来んなよ、デイダラ」
「文句があんなら来んなとかって話じゃねえだろ!ソイツを水に浸けんなって話だ、バカタレ!」
「何でよ。海に来たら水に浸かんなきゃ話になんねぇだろ」
「バカ!!!!着替えろ汐田!いやまずそのエロゾンビから離れろ!」
喚くデイダラを横目に角都が小南を興味深そうに見た。
「お前のそれも紙なのか」
「そうよ」
「だからいつもトドみたいに浜でゴロゴロしているのだな。付き合わされてパラソルを持たされるリーダーの気の毒な事よ」
「水入ったら水着が溶けるし、浜にいたら日に焼けるし、仕方ないでしょ」
「普通の水着を着たらいいだろう」
「お金がないって言ってるじゃない。人の話を聞いてないのね。馬鹿なのかしら、この年寄りは」
「…そんなに金がないのか」
「しつこい」
「…イカ焼き食うか?五百両にまけるぞ?」