第35章 海へ来たらば ー暁with黒の教団ー
「そう?どうでもいいわ、そんな事。それよりイカ」
「金」
「ないわよ、そんなもの」
「なら諦めろ」
「仲間じゃない」
「…さっきから何が言いたいんだ、お前は」
「イカをよこせって言ってるのよ。わからない年寄りね」
「あっはっはっはっ、小南さん!ははははははは、小南さん!」
イカ焼きを二口で片付けた藻裾が朗らかに笑った。
「イカ焼き好きなンスか?」
小南に聞きながら、デイダラのイカ焼きをひょいと取り上げる。
「あ、テメェ俺のイカ…ッ」
「うるせーな。また買えばいいだろ」
取り上げたイカ焼きを小南に渡しながら、藻裾が顔を顰めた。すかさず角都が新しいイカを炭の上にかざす。
「六百両になります〜」
デイダラは目を三角にして角都に詰め寄った。
「ば…ッ、バッカヤロ、二本目から値上げって何のサービスだよ、ふざけんなクソジジイ!」
「俺はクソジジイでも構わんが二本目は六百両だ」
「要らねえよッ!誰が買うかそんなモン!」
「さっき買ったじゃないか。五百両も六百両も百両の変わりしかない。黙って買え。そしてお代わりしろ。次は八百両だ」
「…おいコラ角都。オメー出納係のくせにホントは算数が出来ねぇんじゃねえのか?どういう理屈で六百両の次が八百両になんだよ。七百両の間違いだろ、うん?」
「そうか。なら七百両でいいぞ」
「…何だその手。今じゃなくて次だろ、七百は」
「お前が自分で七百と言ったんだろう。毎度あり〜」
「買わねぇよ!要らねえよ!」
「もう焼き始めちゃったぞ。弁償しろ。八百両だ」
「誰が払うか!テメーが食え!」
「俺が食っても儲からんだろう。馬鹿な事を言うな。馬鹿だな」
「馬鹿はテメーだ!出納係なんか辞めちまえ。この数字音痴の守銭奴め!」
「数字音痴じゃない。駆け引きだ、馬鹿者」
「…剥き出しすぎて駆け引きになってねぇぞ。気付け、角都」
揉める二人をよそに、藻裾が沖と小南を見比べた。
「ペインさん、泳げるんスか」
「さあ。わからないわ。泳いでるとこなんか見た事ないし」
イカ焼きを齧りながら小南は首を傾げる。
「海に来てもパラソルにしがみついてばっかりいるから。ペインは」
「あー…」
「パラソルが好きなのよね」
「…あぁ〜、ナルホドー…」