第35章 海へ来たらば ー暁with黒の教団ー
「止めなさい、デイダラ」
ドデカイサングラスに爆セクシーなビキニ姿でビーチマットに横たわっていた小南が、スッとサングラスを上げて眉を顰めた。本日の髪飾りはハイビスカス、夏の海仕様らしい。
「本当の事はあまり言わないのが大人よ。あなたも少し大人になりなさい。魚介類をわざわざ魚介類とよばなくても魚介類は自分が魚介類だって事くらい知っているものよ。暑いのも辛いし乾くと死ぬし生臭いし、ホント魚介類は大変よね…」
「…じゃあ小南も大人じゃねんだな、うん?本当の事ってのがダダ漏れっぱなしだぞ」
「そうよ、私は永遠の乙女よ。大人になるくらいなら壊れたバイクに飛び乗って目に入ったものをのべつ幕なく何でもかんでもぶっ壊して回るわ。十五の夏万歳」
「いくら何でも十五は図々しくないか、小南」
どうしても倒れて来るパラソルを汗だくで支えていたペインが、焦点の合わない目で小南を見た。
「お前という小南が産まれて早幾歳月、色んな事があったものだがその半分近くを壊れたバイクに乗るために切り捨てるのか。お前との付き合いも随分長い俺に言わせればそんなモンの為に俺の様々な苦労が無かった事にされるのは納得いかん。ー絶対無理。リーダー納得なんか絶対しない」
「…酔ってるの、ペイン?目が左右別々に泳いでて物凄く気持ち悪いから、落としてもいい?肝臓と顎と鳩尾と喉仏、アタックするなら何処がいいかしら?それとも濡れた懐紙で軽く窒息する?」
「そういうお前の暴言も二分の一無かった事になっちゃうんだぞ。吐いて吸うみたいに好き勝手言ってるお前はいいとしても、吸わされて吐かされるみたいにそんな暴言ぶつけられる俺の身にもなれ。たまにはなってみろ、俺に」
「何の罰ゲームよ、それは。あなたになるくらいなら死ぬわよ私。いいの?私が死んじゃっても」
「いいよ、そしたら俺も死ぬから」
目に入った汗を拭いながらペインがフッと笑う。小南は口角を上げて頷いた。
「ふーん」
「…ふーんてお前、それはちょっとひどくないか。俺今なかなかいい事…」
「いい事?何が?何処が?誰が?」