第32章 裸祭り ー角都、飛段ー
「不本意で迷わず繋ぎ?何かひでェコト言われてんなァ。げははははッ」
「次が見つかり次第お前の心臓は迷わず取り出してその場に放置する」
「ふーん。心臓ねぇのに心臓拾いに行けっかなぁ、俺?」
「知るか。いい機会だ。行けなければ諦めろ」
「諦めきれねぇ」
「ますます知るか。黙って水を被れ」
「あん?何抜かしやがる。誰がこのクソ寒ィのに水なんか被るかよ。ボケたか角都」
「水を被って穢れを祓う。お前の穢れは七つの海が枯れ果てる程の大水を被っても祓いようがないだろうが、形だけでも被っておけ。水が惜しいが仕方ない。さあ被れ」
「さあ被れで人が思い通りに水なんか被ると思ってんのか?バカだなオメぅぎゃおッ!バ、ババババ、バカヤロテメー、何しやが…ぉおぅうわお!!!!バカッ、止めれ!し、死ぬ!ひ…ひ…ひゃっけぇッ!づ、づ冷だずぎでイダイ…ッ!」
「…体から湯気が出てるぞ。気味の悪い」
「…………おいゴラ」
額に青筋を立てた飛段が目を三角にして足を踏み出した。
「テメー人に水掛けといて気味悪ィとは何だ、気味悪…ギャーッ、おじいちゃんー!?」
目の前でやおら水を被った角都に飛段は両手で口を覆った。
「止め止め、止めろ、ダメ、止めて!おじーちゃんいよいよ死んじゃうよ!?五個ある心臓が五個とも一遍に止まっちゃう!!そんななっても貸さねえからな、俺の心臓!」
「借りるんじゃない。使い捨てるんだ。話をよく聞け、この馬鹿が」
「尚悪ィよ、クソじじぃ!大体何だ!?何で裸祭りなんかに交じんなきゃねんだ!?どうせ脱ぐなら男より女だろ!?年食い過ぎちゃってそんな事もわかんなくなっちまったか!?可哀相な角都うぅぅ!!!」
「喧しい。そんな大事な事がわからなくなるような俺ではない。馬鹿にするな」
「じゃあ何よ、このザマは!」
「バイトだ」
「バイトォ?ざけんなよ、こんな真似させやがって、高く付くぞ!」
「高く付く?お前が?何処の馬鹿がお前を高く買うんだ?早く教えろ。連絡とって値段交渉するぞ。うまくすればお前の帰りの交通費が浮く」
「人身売買だ、そりゃ!」
「心外だな。殺しても死なないお前は人というには障りがあるぞ」
「触んのは鬼鮫で間に合ってんだ、この変態どもめ!」
「…触るじゃない。障るだ。鬼鮫は兎も角俺に謝れ」